医療法人社団 健友会 中野共立病院中野共立診療所
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しんぶん健友
第13号(2002年11月10日)


実施から2年半

介護保険でなにが変ったか?

利用者の声

二〇〇二年四月にはじまった介護保険。介護保険によって高齢者にどのような変化が起きているでしょうか?

負担だけが増えた 戸田しず子さん(95)

 西荻窪診療所の患者さんである戸田さんは、介護保険を最初から利用しています。はじめは要介護3でしたが、一年前に家の中で転んでから要介護5になりました。
 同居している長女の裕子さんが、四年前に服飾雑貨の店を閉めてずっとしず子さんのお世話をしています。週三回ヘルパー、週三回「西荻南訪問看護ステーション」の訪問看護を受けています。一カ月の利用料は、二万六三〇〇円あまりです。
 戸田さんは介護保険以前からヘルパーさんをお願いしていましたが、非課税世帯なので以前は自己負担はありませんでした。「いまの方が介護保険料と利用料をとられ、負担が増えた」という実感をもっています。

デイケアで明るく 北森慶子さん

 「お食事がとてもいいですしね、六階のお風呂からは新宿の高層ビルが見えるんですよ」。ニコニコとうれしそうにデイサービスのようすを話す北森慶子さん(89)。
 北森さんは城西診療所の患者さんで、要介護3。遺族年金で一人暮らしです。半年前から毎週一回ヘルパーさんが家事支援に入り、週二回「デイサービスセンター/和田堀ホーム」に通っています。一カ月の利用料は、一万二二七〇円ほど。
 耳が少し遠くて家の中に引きこもる毎日でしたが、「ほんとうは話が大好きで、お世話好き」な北森さんにとって、介護保険の利用は本来の明るさを取り戻し、楽しい生活を送れるきっかけになりました。

ショートスティを利用 高部 君さん

 元教員の高部高明さん(65)は君さん(94)の長男。六年前から君さんのお世話をしています。
 君さんは、週二回のヘルパーと週一回のデイケア、月一回のショートスティを利用しています。ヘルパーとデイケアで約一万二〇〇〇円、ショートスティが約一万八〇〇〇円。合計約三万円の利用料になります。介護保険前はヘルパー代に毎月六万円かかっていたので、半分に減りました。
 費用の一割さえ出せば気楽に使える介護保険は、「お金さえあればいい制度だが、矛盾がいっぱい」と話す高明さん。

部屋代が払えない 実川マキさん(83)

 中野区の老人用賃貸マンションで一人暮らしの実川さん。週二回「ほっと」のヘルパーさんに来てもらい、週一回中野共立診療所の通所リハビリに通っています。
 「昆布の佃煮とたらこ、なすを三つ買ってきて…」―近ごろ足がもたついて転ぶのがこわいという実川さんは、ヘルパーさんに買い物をしてもらえることが一番ありがたい。「毎日ヘルパーが必要」といわれるが、お金がかかるのでがまんしています。
 利用料は合計で月一万円ちょっと。「私の年金ではとても足らない。部屋代が払えないの」と、さびしそうに話します。
 介護保険料は年金から差し引かれてくるから、滞納はできないです。


 値上げなしで、利用料の減免を 
 城西診療所婦長・ケアマネジャー 江浦孝子さんの話

 介護保険がはじまってから、私たちケアマネジャーが区の仕事をやるようになったんですね。
 私はいま午前中をケアマネジャーの仕事に当てて、三四件のプランを立てていますが、ヘルパーの依頼やデイケアの申し込み、車椅子やベッドの手配まで、業者に連絡したり、たくさんの書類を書いて送ってで、すごい仕事量になります。
 そのうえに、「ネズミが出て困っている」「ゴミがいっぱいたまっている」という話が訪問したヘルパーさんから持ち込まれたりなど、さまざまなことがケアマネジャーのところに来ます。
 でも、北森さんのように外に出る機会を得られたり、高部さんのようにショートスティの利用で介護者が息抜きできたりなど、介護保険になった利点は大きいですね。問題はお金です。実川さんのように介護保険料が年金から引かれたり、利用料が高くてお金がなければ利用できないという矛盾は、なんとしても解決しなければならないと思います。
 介護保険料が全国平均で三三〇円値上げされるそうです。(中野区は三〇三〇円から三四〇〇円になると発表。杉並区は検討中)値上げなしで、利用料の減免をすすめてほしいと思っています。


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