昨年一〇月、高齢者の自己負担額が一割(または二割)になってから、健友会の診療所の患者さんでも、往診の回数を減らしたり、ご家族のつきそいや送迎車で外来通院に切り替える方も出てきています。また、薬代もかかることから、一カ月分をこえる処方も珍しくなく、診察を手控える方も増えています。 「こんな状態をこれ以上放置できない」と、昨年一二月、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会の四師会は、「国民誰もが安心してよりよい医療をうけられるように」と共同声明を出し、そのための国民運動を呼びかけました。この呼びかけを受けて、各地の四師会が宣伝・署名行動に立ち上がっています。中野区では四師会がシンポジストとなる「区民シンポ」が三月に開かれます。(3面に案内記事) 以下に、編集部がインタビューした方々のひとことを紹介します。 3割負担は「国民皆保険」とはいえない 中野区医師会理事 山田正興医師 健康保険本人が三割負担になると、それは受診の抑制につながりますよ、確実に。 昨年一〇月の改定で老人の方々の医療費負担が増えたために、受診回数を減らす人や、往診回数を減らしてほしいといってこられる人が増えているなど、健康保険料の引き上げと窓口負担増による影響はほんとうに大きいです。 安心して医者にかかれないということで受診をあきらめてしまう人が多いと、早期治療や予防によって健康で長生きすることが理想なのに、それができなくなります。 自己負担が三割以上になったら、もう皆保険とはいわないんじゃないですか? ですから、今回の健康保険の三割負担は、国民皆保険の根幹をゆるがすことになる重大問題だと考えています。 国レベルでは四師会の共同声明が出されましたが、東京都段階ではまだ具体的な動きがありません。中野区の医師会としては、被保険者三割自己負担の実施凍結に向けて、運動を展開しています。(山田医院院長) *2月12日夜の理事会で、中野区医師会は四師会声明を支持し、3月13日のシンポジウムに山田医師がシンポジストとして参加することを確認しました。 心理的影響が大きい 杉並区薬剤師会会員 杉戸慶子さん 健康保険が二割負担から三割負担になるというのは、いま患者でない人にとっても心理的にすごく影響しますよね。 老人の医療費もそうですが、料金がわからないというのは不安です。 薬剤師は制度が変わって複雑になったために、それに振り回されて服薬指導などが十分にできなくなっています。(明弘堂薬局管理薬剤師) 撤回すべきです 日本看護協会会員 藤原千鶴子さん 私は中野・杉並地域の看護協会の幹事をしていますが、会議では支部の企画についての相談ばかりで、医療保険のことや患者さんのことなどは話されないですね。 他県では四師会が一緒に署名行動などしていると聞きますけれど、東京ではそういう動きがない。中野・杉並でも同じです。 健康保険三割負担は撤回してもらいたいと私は思っています。(中野共立病院副総婦長) 四師会共同声明 現在、政府において、本格的な少子高齢社会に対応する医療制度の構築に向けて、聖域なき構造改革を断行している。 改革の柱は、患者および国民の負担増、医療への株式会社参入、混合診療の導入等であり、財政対策と市場原理の考え方に終始している。 しかし、これらの政策は国民の健康に対する国の責任を放棄し、国民皆保険制度を根底から崩壊させるものである。 よって、われわれ四師会は、国民だれもが安心してよりよい医療を受けられるために、次の項目について連携して国民運動を展開する。 一 被用者保険三割自己負担の実施凍結 一 高齢者の自己負担軽減 一 医療への株式会社参入阻止 一 混合診療の導入反対 平成一四年一二月一一日 | 日本医師会 | 会長 坪井栄孝 | | 日本歯科医師会 | 会長 臼田貞夫 | | 日本薬剤師会 | 会長 中西敏夫 | | 日本看護協会 | 会長 南 裕子 | | |